
この本は農業関連の本にしてはめずらしいビジネス書だ。著者は元外資系の管理職。会社をやめ宮崎県で就農し、ぶどうを栽培している。最近本屋で農業関連のマーケティングに関する本を目にすることもあるが、ざーっと目を通してみると専門的過ぎてわかりにくい。それらの本は農業者自身ではなく、研究者が書いたため一般の農業者にとって身近に感じることができないだろう。日本の農業政策は規模拡大を目標とし、それに伴う補助金を付け規模拡大こそが日本の農業の生き残り策だと言ってきたが、この著者はそれに真っ向から異論を唱えている。著者である杉山氏の目指す農業は、ずばり3K(快適、カッコイイ、金が儲かる農業)かなり痛快だ!元エリートビジネスマンだっただけあり、その経営センスもうなずける。規模拡大し寝る暇を惜しんで働いて価値のないものをいっぱい作るより、小規模で価値の高い商品を作る。そして余った時間は自分の時間として楽しむ。というのが杉山氏のスタイルだ。本来農業従事者はお金がなくても時間的精神的余裕はあったのだが、機械化され規模拡大されると時間的余裕も、そしてリスクが大きくなるため精神的にも金銭的にも余裕がなくなってしまったのも事実だ。一度規模拡大というメリーゴーランドに乗ってしまうと、そこからはなかなか降りられない。この本を読み、21世紀の農業経営のあり方を再考すると共に、これぞロハスなのだと感じた。